「トランスルーセント ~彼女は半透明~」のこと

かつて僕は、青年向け雑誌「月刊 コミックフラッパー」で
「トランスルーセント ~彼女は半透明~」という漫画を連載させてもらってました。
初めての連載、単行本で、2003年3月から2006年11月号まで掲載、と奥付にあります。

この作品を描くきっかけは、漫画原稿を投稿し入賞したコミックフラッパーで、
新人漫画家に、テーマを決めて短編を描かせる、という企画をやる、と。
第一回目としてのテーマが、「透明人間」。
電話で担当のI氏に企画を説明され、わかりました考えてみますと言って電話を切った30秒後には
第一話のプロットが頭の中で出来てました。
その時の自分は、まじでオレ天才だと思いましたが、その時限りでした・・・。

女の子が、透明人間になる。
病気で。
透明病。
思春期の女の子が透明になってしまい悩んでる。

主人公は「透明病」という病気に冒されてしまった中学2年生の少女、白山しずかと、
彼女を見守り、時にはげます唯見マモル。


当時の僕は、ようやく、本当にようやく、
キャラクターの動かし方ということを掴みかけてた時期でして
「自分の子供に、どんな人物になってほしいか」「どんな友達がいててほしいか」
と、岡本一広本人ではなく、自分の子供に投影することで
驚くほどすんなり動かすことができたんです。
だから、マモルとしずかは僕の子供であり、
大河内さんは、理想の子供の友達なんですよ。

「透明病」については、科学的にどうとか考え始めると
設定に首を絞められ、自由に描けない予感がバリバリしましたので、
あえて深く考えないようにし、あくまでしずかの抱える問題としてだけ描きました。
この判断は今でも間違ってなかったと思ってます。


最初は「透明人間」の企画のうちの1本のつもりだったんですが、
思ってた以上に評判をいただき、誌面に空きがあった時に載せる、という
不定期シリーズ連載みたいな形で、ちょこちょこ誌面におじゃまするようになります。
単行本の2巻、第9幕か10幕あたりまで。その後ちゃんとした「連載」ということに。

連載は、一部で評価してもらってたものの、
いかんせん、単行本が売れません。
売れないのに、3年以上連載が続けられたのは、
担当編集者I氏の尽力が大きかったんだと想像してます。

連載終了が決まり、最終巻である5巻の作業に入る時、I氏に言われました。
「4巻までの売上を見るに、大方の予想では発売すると赤字になる。
会社としては5巻の発行は無理。
でも、自分としてはこの作品は、最終巻も出して
きちんとまとめたひとつの作品、であるべきだと思うんです」

で、I氏が裏ワザにも取れるような方法を駆使して、第5巻は発売されたんです。
今じゃ考えられないことです。
I氏にはいくら感謝しても足りません。


連載が終わって2007年、大阪にある小劇団が、「トランスルーセント」を舞台にしたい、と言ってくれました。
「シアターシンクタンク 万化」という劇団さんです。
もちろん快諾し、担当I氏とともに観劇させていただきました。そして感激しました。
連載中、最後まで大河内さんの下の名前を決めかねていたんですが
「万化」の主宰、美浜源八さんに「大河内夏香」と決めていただきましたよ。


今でも、ツイッターなどで「トランスルーセント好きでした。今でもたまに読み返します」
と言ってくれる人がいたりします。
本当に幸せな作品だと思います。
ヒットもしてないのに、作品のWikipediaがあったり。
架空のアニメのオープニングテーマを作ってくれる人があったり。

本当にありがたいです。



長々と書きましたが、書こうと思ったのはですね、
発行元のメディアファクトリーの親会社のカドカワが、
ニコニコカドカワフェアというのを9月30日からやってるんですよ。
参加してる各コミックの電子版がほぼ半額になるフェアで、「トランス~」も対象になってます。
ebook japanさんがこちら。
「トランスルーセント~彼女は半透明~」はこちら。10月14日までだそうなのでお早めに!

でももう、売れる売れないはどうでもよくなってます。
絵がへたくそなのは自覚してますんで、心のハードルを下げて読んでほしいです。

主人公の3人を描きました。
translucent 10 years after
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by osekkaisensei | 2016-10-03 02:56 | マンガ | Comments(6)
Commented by かつお節 at 2016-10-03 23:47 x
うひゃーw 久々のトランスルーセントですね。
三人の元気な姿がまぶしいです。
2010年にエミフルで岡本さんと初デートしたときに
1巻にサインしてもらったのが懐かしいですなあ。

この作品はキャラクターに感情移入しやすいので(特にマモル君)、作品世界にはまり易かった感じです。
もちろん今でも大好きです。

電子版で人気が再燃して、再連載・アニメ化・遂には劇場版に・・・なんてコトになったら嬉しいですね。

Commented by くろんび at 2016-12-03 23:08 x
今日、面白そうだと思い、駅で「麺 お家ラーメン」を購入しました。読み進めて行くうちに、何処かで見たような懐かしい絵柄の漫画が登場しました。その作品の雰囲気やタッチから、少し考えて、「トランスルーセントだ!」と10年前の記憶がいっきに蘇ってきて、懐かしい気持ちになりました。心が暖かくなるストーリーは、トランスルーセントと同じでした。「トランス〜」は、高校生の時、書店で見かけたコミックフラッパーを立ち読みした時に偶然見つけておもしろいと思ったことがきっかけで、単行本が発売される度に発売日に書店に足を運んでいました。最終巻の発売が危ぶまれていたと、この度拝見しましたが、なんとか刊行してくださり大変感謝しております。白山さんの悩みに真剣に向き合う唯見くんの真っ直ぐな気持ちから多くのことを学びました。
また岡本さんの作品を読むことができたらと期待しています。
Commented by osekkaisensei at 2016-12-05 01:46
>かつお節さま
しまった、今になってコメント返してないのに気づきました。すいません。
あれって2010年でしたか。懐かしいですね。
ファンだと言ってくれる人に会う機会などあまりないので、嬉しかったのを覚えてます。
大阪の舞台を観劇した翌日に、時間があったので二回目を観に行ったんです。
日本橋でプラモをいくつか買って手に持ってたもので、
「岡本さんはリアルマモル君」だと劇団のみなさんに言われて(笑)。

再連載、多分無いですがもし実現したら非常に怖いです。
当時の自分を越えられる気がしませんわ。
Commented by osekkaisensei at 2016-12-05 01:55
>くろんびさま
ありがとうございます!
二度の偶然で僕の作品に触れてくれたんですね。
特にトランスルーセントは、高校生という多感な時期に読んでもらえたということで
作者としてちょっと怖い部分もありますが…(汗)。

予定は全くありませんが、次回作が決まりましたら
このブログやツイッターなどで発表しますので
どうか気長にお待ちください(笑)。
コメント、励みになりました。
Commented by ひかる at 2017-03-15 07:52 x
20歳の頃買いました!バイトやめそうな状態で購入したので本当に買ってよかったです。。。
ものすごく癒されて、今も大事にとって買ってから毎年一回は読み直すほどの好きな漫画です!
友達に貸してもいい内容だね。よくこんないい作品見つけたね。と言われています。
岡本先生には私も感謝している作品です!
Commented by osekkaisensei at 2017-03-15 14:07
>ひかるさま
感想ありがとうございます。心に染みました。
自分の作品を描かねばならないな、とあらためて思いました。

本当にありがとうございます!